パパと私

不倫をしちゃったパパだけど、今は普通に暮らしています。

初めて聞いた、彼の声。

 

嘘で覆いつくした事実は、その嘘をつき通せば架空のものになる。

でも、嘘を一つでも解放したら、すべての事実を引きずり出される。

 

だから、嘘をつくという行為は、生半可な気持ちでしてはいけない事。

 

「かけていいよ。」

 

彼のその言葉に、私は胸が震えた。

まるで、少女のように。

 

「もしもし。」

 

優しい、彼の声。

 

「もしもし。。。」

「はじめまして。 浩介です。」

「はじめまして。。。 なんだか、恥ずかしいね。」

「うん。 いつも、メールでたくさん話してるのにね。」

「うん。 でも、声が聞けて嬉しい。」

「俺も。 かけてくれて、ありがとう。」

「私の方こそ、ありがとう。。。」

 

私たちはまだ会ってもいないのに、まるで初めて会ったかのように緊張し合っていた。

私はその時、彼に恋をしているのだと改めて感じた。

それから、私たちは時々電話で話すようになり、心の距離を深めていった。

 

その頃は、まだ折り畳みのタイプの携帯しかない時代だった。

今のようにスマホがなかったから、LINEでトークをすることも出来なかった。

だから、私たちはいつもPCの文字で会話をしていた。 

今はもう配信されていない、ヤフーメッセンジャーというツールで。 

彼は、1対1で会話をすることをPM(プライベートメッセージ)と呼んでいた。

私は、家族が寝静まった頃に届く、彼の優しいメールが好きだった。

 

「PM、おいで。」

 

まるで待ち合わせの場所に走って行くかのように、私はPCの電源を入れ、彼の待つスクリーンに向かった。

 

海のように広いネットの世界で知り合い、こうしてお互いを想い合うことなど、私は想像もしていなかった。 

結婚してから一度もパパ以外の人を好きになったことが無い私には、とても新鮮で、初めての冒険でもしているような感じだった。

でも、いつも心の何処かに罪悪感はあった。

それでも、私をこんな風にしたのはパパなのだと、そう思い必死に自己弁護をしていた。

 

こうなったのは、パパが私と向き合うことから逃げたせい。

だから、私は悪くない。。。

 

そう、都合よく思っていた。

 

ある日、いつものように私は彼と電話で話をしていた。

メールの文字とは違い、声から伝わる言葉はより彼を身近に感じることが出来た。 

彼は平日休みの時、奥様が仕事に行っている間、私との時間を作ってくれていた。

でも、その日、予想外に奥様がいつもより早く帰宅した。

彼は急な事で動揺したのか、しばらく電話を切らずに奥様とやり取りをしていた。

 

その時、彼は「人の物」なんだという事を知っていながらも、私は深い悲しみを感じずにはいられなかった。 

自分もまた、同じ「人の物」のくせに。

 

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初めから読みたいと思ってくれた方は、こちらの初回エントリをどうぞ。

不倫が変えた私の生き方 


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