パパと私

不倫をしちゃったパパだけど、今は普通に暮らしています。

怒りは、悲しみへ。

 

彼女の声を聞いたのは、それが初めてだった。

以前から名前と存在は知っていたけれど、パパの会社の事務員さんという認識しかなかった。

でも、数日後、その年にあった社員旅行の集合写真を見て、彼女がどんな顔をしているのかがわかった。

 

その写真は、もう捨ててしまったけれど。

 

電話の向こうの彼女は、止まった時間を掻き消すように、慌てた様子で話し出した。

 

「いつもお世話になっております。今日は、どういったご用件でしょうか。」

 

彼女の声は、震えていた。

もう、それが答えだと思った。

私は、考えた言葉ではなく、その時に思い付いた言葉だけを発した。

 

「主人の服から、貴女からのメモが見つかりました。

また会いたいと書いてありましたけど、どういう事ですか?」

 

私の声もまた、微かに震えていた。

 

「それは、あの、いつも色々と相談に乗って頂いてるので、あの、相談って家族の事とかなんですけど、本当にいつも親身に聞いて下さって、同僚として優しくして頂いてるんです・・・。」

「本当に、それだけですか?」

「はい、とても優しい方なので、よく話を聞いてもらってるんです。本当に、それだけなんです。」

 

私は、一つの言葉にずっと違和感を覚えていた。

それが何故なのかがわかったのは、電話を切った後だった。

 

彼女が嘘をついていると確信した私は、こう切り出した。

 

「主人と、付き合ってるんですか?」 

 

彼女の声の震えは、更に大きくなった。

 

「いえ、本当にそんなんじゃないんです。信じて下さい。私はただ、〇〇さんが優しくしてくれるので、それに甘えて、色々と相談に乗ってもらっていただけなんです。」

 

私は、もういいと思った。

もう、これ以上彼女と話していたくない。

そう思って、それ以上何も言わずに電話を切った。

 

胸が、押し潰されそうだった。

息をするのも本当に辛かった。

 

ふと気付くと、涙が頬を伝っていた。

 

その理由はふたつ。

 

一つは、パパが彼女と不倫をしていると確信した事。

もう一つは、パパがどんなに彼女に優しくしていたかを知ってしまった事だった。

 

「優しい」

 

この言葉が、通話中からずっと胸に引っ掛かっていた。

私はその頃、パパとの関係に寂しさを感じていたから、パパの優しさを独り占めしていた彼女に、咄嗟に嫉妬をしてしまったのだ。

そして、パパに優しくしてもらっていた彼女の事を死ぬほど羨ましいと思ってしまった自分が、とても虚しく思えた。

 

その虚しさは、私の心の中で暴れていた怒りという名の感情を、深い悲しみの色に染めていった。

 

私の涙は、止まらなかった。

 

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初めから読みたいと思ってくれた方は、こちらの初回エントリをどうぞ。

不倫が変えた私の生き方 


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